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2022.03.28| オンラインジャーナル

デジタルアーカイブにおける『肖像権ガイドライン』の試み

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4. 肖像権ガイドラインの考え方

肖像権ガイドラインでは、デジタルアーカイブ機関における所蔵写真を公開する場面を想定し、3つのステップを設けています。

 

ステップ1では被写体の判別が可能か否か、ステップ2では被写体の同意の有無をそれぞれ判断します。被写体を判別可能であり、被写体から公開の同意が得られていないものについて、ステップ3としてポイント計算を行います(図表1参照。なお図表1・2、及びポイント計算リストは、いずれもデジタルアーカイブ学会「肖像権ガイドライン」より。)。

 

図表1

 

そして、ステップ3では、後述のポイント計算リストにて示した、「被撮影者の社会的地位」、「被撮影者の活動内容(活動の種類、被撮影者の立場)」、「撮影の場所」、「撮影の態様(写り方、撮影状況、被写体の状況)」、「写真の出典」、「撮影の時期」の項目と個々の点数をもとにポイント計算を行い、以下の図表2に照らして公開可否の判断を行います。なお、一律に公開可又は公開禁止とすることはせず、段階を分けて公開に適した方法を設定する、との枠組みを提示しています。

 

図表2

 

このステップ3のポイント計算の方法が、裁判例による総合考慮の一定程度の客観化を目指した部分です。個々の項目とそれぞれの点数については、以下のポイント計算リストのとおりです。個々の項目について判断する際には、写真の入手経緯や過去の公開方法、写真の置かれた文脈(コンテクスト)なども考慮したほうが望ましい場合があるのですが、原則としては、写真そのものを単独で見た際にできる限り類型的・客観的に判断できるよう、項目の検討がなされています。

 

なお、あくまで当該点数表は、個々のアーカイブ機関が自主的なガイドライン作りを行っていくためのたたき台として提示されているものであり、DA学会としては、各自がその公開目的や写真の性質に応じて項目や点数の増減等のアレンジを行うことを想定し、推奨しています。紙幅の関係から、ここで各項目の詳細な説明を行うことはできませんが、肖像権ガイドライン本体には解説が付され、個々の項目の考え方や背景となる裁判例等についても紹介されていますので、詳しくはぜひそちらをご確認ください。

 

1 被撮影者の社会的地位
公人(例:政治家)(+20)
著名人(例:俳優、芸術家、スポーツ選手)(+10)
16歳未満の一般人(-20)( ただし保護者の撮影に対する同意が推定できる場合は減点しない)
有罪確定者(+5)
元被疑者で逮捕・摘発の報道から10年経過(-10)
被疑者・刑事被告人の家族(-10)
事件の被害者とその家族(-5)

 

2 被撮影者の活動内容
2-1 活動の種類
公務、公的行事(+10)
歴史的事件、歴史的行事 (例:オリンピック、万博)(+20)
社会性のある事件(歴史的とまでは言えないもの)(+10)
公開イベント(例:お祭り、運動会、ライブ、セミナー)(+5)
公共へのアピール行為(例:街頭デモ、記者会見)(+10)
センシティブなイベント(例:宗教、同和、LGBTQ)(-5)

 

2-2 被撮影者の立場
業務・当事者としての参加(例:出演者、コンパニオン等のイベントスタッフ)(+5)
私生活・業務外(-10)
社会的偏見につながり得る情報(例:風俗業・産廃業への従事、ハンセン病関連)(-15)

 

3 撮影の場所
公共の場(例:道路、公園)(+15)
撮影を予定している場所(例:相撲の升席)(+5)
管理者により撮影が禁止されている場所(例:コンサート会場、寺社)(-5)
自宅内、ホテル個室内、避難所内(-10)(ただし立入りを承諾していると推定できる場合は減点しない)
病院、葬儀場(-15)

 

4 撮影の態様
4-1 写り方
多人数(+10)
特定の人物に焦点を当てず(+10)
大写し(-10)
画質が悪く容ぼう・姿態を判別しづらい(+10)

 

4-2 撮影状況
撮影承諾の意思を推定可能(例:カメラにピースサイン、笑顔)(+5)(プロカメラマンによる取材のように、撮影者と被写体の関係性から承諾を推定できる場合も含む)
撮られた認識なし(-10)
撮影拒絶の意思表示(例:手でカメラを遮ろうとする)(-20)
公開を前提としないプライベート撮影(例:家族、友人同士等による撮影)(-10)

 

4-3 被写体の状況
遺体、重傷(-20)
水着など肌の露出大(-10)
性器、乳房(-20)
身体拘束(例:手錠・腰縄)(-10)
一般的に羞恥心をおぼえる状況(例:泥酔、喧嘩、悲嘆、事故の最中)(-5)

 

5 写真の出典
刊行物(例:新聞、書籍、公的文献)等で公表された写真(+10)
作品として展示・公表された写真(+5)
被写体本人または遺族から提供されたもの(+15)
遺族が存在しない故人に関する写真(+30)
代替性のない写真(+10)

 

6 撮影の時期
撮影後50年以上経過(+40)
撮影後40年経過(+30)
撮影後30年経過(+20)
撮影後20年経過(+10)
(撮影後50年を超える場合は、ガイドライン利用者の判断でさらに加点を設けることを妨げない)

 

 

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