日本組織内弁護士協会(JILA)は、組織内弁護士およびその経験者によって創立された任意団体です。

よくある質問

FAQ

よくある質問とその回答をまとめました。 以下の質問をクリックすると、回答をご覧いただけます

米国には何人くらいの組織内弁護士がいるのですか?

日本の日弁連にあたる米国法曹協会(ABA)が、定期的にではありませんが、法曹の所属先に関する調査を行い統計資料を作成しています。こちらから入り、「Lawyer demographics table」をクリックしてください。PDFが開くので、右上の「PRACTICE SETTING」の欄を見ると、1980年から2005年までの間の法曹の勤務先に関する調査結果が掲載されています。これを見ると「Government」(州政府や連邦政府など)にに8~9%、「Private Industry」(私企業)に8~10%、「Private Association」(私団体)に1%程度で推移しています。

同資料には、最新の米国の法曹人口が記載されていますので、2005年以降、上記の数字がそう大きくは変化していないという前提に立つと、現在の企業内弁護士と行政庁内弁護士(ただし、米国の数字は日本でいう検事や訟務検事を含みます)のおおよその数字が分かります。

より詳しい情報が欲しい場合は、直接ABAにお問い合わせ下さい。

日本には何人くらいの組織内弁護士がいるのですか?

2012年6月末現在で771人の企業内弁護士がいます(当会調べ)。この数字は正式に登録地を企業においている弁護士に限られます。正確な人数は把握できていませんが法律事務所に登録を残したままパートタイムや出向などの形で実質的に企業内弁護士として働いている弁護士が多数存在しています。

また、2006年10月現在69人の行政庁内弁護士がいます(日弁連調べ)。行政庁に勤務する弁護士の多くは、登録地を法律事務所に残したまま行政庁に勤務しており、また、採用は各省庁ごとに行われているため、パートタイムや出向で企業に勤務する弁護士同様その人数や所属を把握することが難しくなっています。

最新の統計データについては、当会の「資料・統計等」をご参照ください。

どのような企業に組織内弁護士が多いのですか?

従来から、外資系金融機関は多くの組織内弁護士を置く傾向にあります。業種別では保険、金融とIT関連企業に多いという傾向はありますが、各業界において事業規模や売上などの面それぞれ上位に位置する企業には企業内弁護士が多いという傾向があります。

なお、ここ5年ほどは、日系企業全般の組織内弁護士が急増しており、この傾向は今後も続くと思われます。

最新の統計データについては、当会の「資料・統計等」をご参照ください。

どのような行政庁に組織内弁護士が多いのですか?

多くの中央官庁に組織内弁護士が任期付公務員として所属していますが、特に、金融庁、外務省、公正取引委員会、法務省などに多くの弁護士が所属しています。最近では、金融庁所管の証券取引等監視委員会や各地方財務局の金融検査部門等にも増えてきています。

金融庁関連では金融機関に対する検査業務、外務省では条約締結交渉と起草、公正取引委員会では審判、法務省では民商法改正、など、法律実務家に向いた職場が中心となっています。

最新の統計データについては、当会の「資料・統計等」をご参照ください。

企業に所属する組織内弁護士(企業内弁護士)はどのような業務を行っているのでしょうか?

企業内弁護士の業務内容は、所属する企業や部署によって大きく異なります。知的財産戦略の立案を専門とする者もいれば、ロビー活動を専門にする者、法務部門の統括をする者、訴訟管理を行う者、コンプライアンスシステムの策定・実施・監視を統括する者など様々です。商社であれば産油国のエネルギー政策、テレビ局であれば番組制作など、法律知識だけでなく現場の専門領域に踏み込んだ業務をすることも少なくありません。

詳しくは、「業種別特色紹介」をご参照ください。

組織内弁護士と顧問弁護士では、行う業務や役割に違いがあるのでしょうか?

現場の業務に密着している以外にも期待される役割自体が大きく異なります。企業の法務部門の業務は、①法的問題の把握、②解決方針の策定、③案件処理、④案件の終結、⑤日常業務へのフィードバック、という流れを辿ります。

このうち、一般的に顧問弁護士に期待されているのは「③案件処理」ですが、企業内弁護士には、その前後の「案件の入口」と「案件の出口」の管理についても期待されています。

詳しくは、「組織内弁護士とは」をご参照下さい。

組織内弁護士が増えると、顧問弁護士の仕事はなくなってしまうのでしょうか?

逆に、組織内弁護士の人数が増えると、その企業や組織が外部の弁護士に発注する業務量は増加する傾向にあると言われています。組織内弁護士が問題点を次々と発見して業務を外部に発注するためです。また、社内で必要な事実関係や論点を整理した上で発注するため、外部の弁護士の側もスムーズに業務を行うことができます。ただし、外部の弁護士に求められる業務の水準も高くなる傾向にあります。

組織内弁護士は職務の独立性が守られないということはないのでしょうか?

勤務時間の指定や扱える案件の限定、就業規則の遵守など、業務の遂行方法といった点での制約があることは当然ですが、英米法でいうところの「プロフェッションとしての独立性」という意味でいえば職務の独立性は守られています。逆にいえば、弁護士を雇用した組織としては、弁護士に自由な発言権を与え、積極的にコンプライアンス上の問題点について指摘するといったことをさせねば雇用した意味がありません。

なお、複数の弁護士によって法務部が構成されている場合の相互関係については、法律事務所と同様に、完全に相互にフラットな関係の場合もあれば、上下関係がある場合もあり、組織によって異なります。

弁護士資格の有無は企業にとってどのような違いがあるのでしょうか?

資格を持たない法務スタッフの方々にも優秀な方々は沢山いますが、企業内弁護士は特に、①司法試験、司法研修所、法律実務を通じて法体系全体の体系的な理解と紛争解決実務の感覚が身に付いていること(能力)、②司法研修所や弁護士会などを通じて弁護士や法律事務所に対して広い人脈や最新の情報を有していること(人脈)、③訴訟代理権や各種調査権などの法的権利に加えて守秘義務などの業務の適性を担保する特別の地位を与えられていること(資格)、などの特徴を持っています。

特に平成20年代に入ってビジネスローの分野における訴訟実務の重要性は飛躍的に増大しています。紛争の中には外部の弁護士だけでなく企業内弁護士が法廷に参加した方が企業にとってメリットの大きい類型もあります。訴訟代理人としての資格を有し、「自ら法廷に立つ」という選択肢を保有していることはそれ自体が大きなメリットです。

ただ、実際のビジネスジャッジでは、こうした紛争が発生した場合を見越して判断しますが、その際には訴訟経験に基づいた「先読み」能力が欠かせません。逆に、新人弁護士を採用した場合は、企業にいながら、いかにして訴訟実務の経験を積ませるかが育成上の課題としてあげられます。

詳しくは、「企業内弁護士と訴訟実務」をご参照ください。

組織内弁護士も訴訟の代理人として法廷に行くことがあるのですか?

企業に所属する企業内弁護士と、行政庁に所属する行政庁内弁護士でも異なります。企業内弁護士の場合、所属する企業や部署にもよりますが、日弁連の調査では、約3割程度の企業で、社内弁護士に訴訟代理人をまかせています。社内弁護士だけで処理するケースと社内弁護士と社外弁護士で共同して処理するケースがありますが、これもケースバイケースです。一般的には、①外部に専門家が存在しない案件、②訴状や答弁書だけ出しておけば解決するような単純な案件、③膨大な背景事情がある案件、などは、社内弁護士が単独または共同して担当するケースも多いようです。

これに対して、行政庁に所属する行政庁内弁護士の場合、法廷に立つケースはこれまでのところありません(公正取引委員会において審判を担当するケースはあります)。今後、訟務検事としての任期付採用などがはじまれば、行政訴訟を扱う組織内弁護士も登場するかも知れません。

詳しくは、「企業内弁護士と訴訟実務」をご参照ください。

組織内弁護士は、所属する組織の業務とは別に、弁護士として個人的に事件を受任することができるのですか?

まず、行政庁内弁護士の場合、公務員としての職務専念義務があるため、個人事件の受任は一切認められません。

一方、企業内弁護士の場合、所属する組織の就業規則や就職時の契約によることになります。副業を一切禁止している企業ではできませんし、上司の許可を副業の要件としている企業では逐一上司の許可を得ればできることになります。

ただ、通常の企業では個人事件を受任することはあまり認められません。なお、週に3日間といったパートタイム的な雇用形態で勤務している組織内弁護士については、それ以外の日については自由に個人事件に従事することができるのが通常です。

ただし、企業との間でコンフリクトが生じる案件はもちろんのこと、社会的な関心を集めている事件のように、パートタイムの弁護士とはいえ、特定の企業の従業員がそうした案件の代理人を勤めていることが、当該企業に対して悪影響を与える可能性のある場合も有ります。そうしたものについては、企業との信頼関係の観点からもなんらかの取り決めを事前にしておくとよいでしょう。

組織内弁護士は、国選弁護や当番弁護を引き受けることができるのですか?

国選弁護や当番弁護も報酬が発生する以上、営利活動に該当し、個人事件の受任と同様の結論となります。行政庁内弁護士であれば一切受任できませんし、企業内弁護士であれば副業に関する就業規則の定めによることになります。

なお、企業の中には新人弁護士に法廷経験を積ませる点でメリットがあるとして、新人弁護士に対しては業務に支障の無い範囲で奨励しているところもあります。

組織内弁護士は弁護士会の会務活動を行っているのですか?

単位会(東京弁護士会など)のほか、日弁連の業務改革委員会や弁護士業務委員会に所属し、組織内弁護士の推進のための活動をする者が少なくありません。また、企業に就職する前に所属していた委員会や研究会にその後も引き続き所属するケースことも多いです。 弁護士会の各種研究会は勿論のこと、業務改革委員会の企業内弁護士推進チームや、民暴委員会など、企業内弁護士が所属していることによって、企業にも情報が入るなどのメリットがある委員会も少なくありません。

全体としては、委員会活動を行っている組織内弁護士は他の弁護士と同程度か、むしろ積極的に参加しているように思われます。

一度組織内弁護士になると、法律事務所に戻ったり、独立したりするのが難しくなったりしてしまうのではないでしょうか?

企業法務部での経験を活かして大手法律事務所や特定分野の専門事務所に移籍するというケースはよく見られます。一例としてアフラック法務部は常時複数の弁護士を採用していますが、これまでに多くの弁護士が会社での勤務経験を活かして法律事務所に転進しています。その後の会社との関係も総じて良好で、出身者である弁護士と顧問契約を結ぶこともあれば、独立開業の際にはアフラック日本法人の社長が開設する事務所の推薦文を書いてくれることもあるほどです。すでに企業内弁護士の歴史のある企業では、多かれ少なかれ当該企業の法務部出身の弁護士が法律事務所で活躍しています。

また、企業で得た知的財産分野の専門性を生かして自ら事務所を設立して独立することも可能です。しっかりした専門性を見につけることは、独立開業や共同独立開業の大きな原動力となります。ただし、長期間組織内弁護士を続けると、事務所経営のノウハウ不足や顧客不足となることもあり、いきなり1人で独立開業することは困難が伴うことが少なくありません。企業内弁護士から独立を目指す場合、一旦はどこかの法律事務所に移籍してしばらく弁護士業務を行い、準備を整えて数人で独立開業するということが多いようです。

法律事務所に移籍することなく、企業を退社すると同時に自ら事務所を設立したいと考えるのであれば、在職中から、弁護士としての能力はもちろん潜在的な顧客の確保や、一緒に事務所を経営できるパートナーを見つけておくこと、そして何より所属する企業自体と退社後も円満な関係を維持できるような関係を築いておくことが大切です。

組織内弁護士に必要な資質はありますか?

迅速な対応や決定した方針の実践のためには、関係各部署との連携が不可欠です。特に、複数の部署にまたがるプロジェクトやトラブル案件の場合、法務部に全体を調整する役割が求められることもあります。弁護士としての基礎的な力は当然ですが、優秀な組織内弁護士になるためには、コミュニケーション能力は重要な資質です。

もっともこれらは通常の弁護士にとっても大切な能力であって、取り立てて組織内弁護士だけに求められる資質ではないかも知れません。

組織内弁護士になるには英語力が必要ですか?

就職する企業にもよりますが、一般的にはTOEIC800点程度の英語力は欲しいところです。英語能力はその気になれば急速に上達します。弁護士になってからでも遅すぎるということはありませんが、比較的時間に余裕のある修習生のうちにブラッシュアップしておくことをお勧めします。また、帰国子女であったり特に英語が得意であったりするのでなければ、TOEFLの受験の際には専門の予備校に通う弁護士が多いようです。

もっとも、これらは組織内弁護士に限ったことではなく、弁護士一般にいえることです。

企業が社内弁護士を募集する際の一般的な方法について教えてください。

企業や業種に応じて様々な方法がありますが、多くの企業が利用している一般的な方法は次のとおりです。

<司法修習生を採用する場合>
①「ひまわり求人求職ナビ」(日本弁護士連合会)を利用する
②「ジュリナビ」(ジュリスティックス株式会社)を利用する
③司法修習生向け就職説明会にエントリーする(例えば、「司法修習生向け東京三弁護士会就職合同説明会」等があります。)
④各法科大学院で就職説明会を行う
⑤主要な法律雑誌に募集広告を掲載する
⑥自社サイトに募集情報を掲載する
⑦一般的な転職情報誌や情報サイト等を利用する

<実務経験を有する弁護士を採用する場合>
①「ひまわり求人求職ナビ」(日本弁護士連合会)を利用する
②エージェントやヘッドハンターを使う
③主要な法律雑誌に募集広告を掲載する
④自社サイトに募集情報を掲載する
⑤一般的な転職情報誌や情報サイト等を利用する