日本組織内弁護士協会(JILA)は、組織内弁護士およびその経験者によって創立された任意団体です。

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2020.06.29| オンラインジャーナル

自動運転・MaaSの第一人者がJILA会員へ書き下ろし!「自動車という法律のフロンティア」

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4. ノーアクションレター取得で直面した通達行政

もちろん、通達行政がすべてダメだというわけではありません。通達やガイドラインで法令の詳しい解釈が示されることは望ましいこともあるでしょう。しかし、多くの通達は従来からある事業形態を前提として書かれているため、新しいサービスを始める場合の指針となりにくいのです。

 

たとえば、私は、3年前にレンタカー事業について法令適用事前確認手続(いわゆるノーアクションレター)の照会をしたことがあります(照会内容回答)。レンタカー事業は、道路運送法80条という非常に短い条文により規制されています。

(有償貸渡し)
第八十条 自家用自動車は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない。ただし、その借受人が当該自家用自動車の使用者である場合は、この限りでない。
2 国土交通大臣は、自家用自動車の貸渡しの態様が自動車運送事業の経営に類似していると認める場合を除くほか、前項の許可をしなければならない。

しかし、実際に事業を検討する際には、通達との整合性が問題となります。これまでレンタカーについては、スタッフがいる営業所で貸し出す通常の形態から、レンタカー型カーシェアリング、そしてワンウェイ方式のレンタカー型カーシェアリングへと徐々に規制が緩和されてきた歴史があります。照会したのは、顧客が指定した場所まで自動車を運び、顧客が指定した場所で受け取るサービスだったのですが、顧客から自動車の返却を受けた後、次の顧客に貸し出す前に、必ず一度駐車場に戻らなければならないというのが国土交通省の回答でした。しかも、駐車場に戻りさえすれば、そのまま停まりもせずまた出発して良いが、しかし、レンタカーは営業所を起点として考えられているので、営業所である駐車場に毎回戻ることが必須である、というのでした。

 

この例から分かることは、通達は「どういった形態の事業を認めるか」に重心を置いて書かれているため、新しい事業を行う上での指針となりにくいということです。通達が既存の事業に沿った形で書かれているため、規制の趣旨や内容から演繹的に考えるのではなく、これまでの事業形態とどのように異なるのかという視点で物事を判断しがちになるのです。これは新規事業を考えていこうとする上で足かせとなります。

 

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