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2021.06.09| オンラインジャーナル

EdTechを活用したオンライン教育(研修・セミナー)の法務

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2. 著作権

オンライン教育においては、第三者が作成した記事、イラスト、写真などの著作物を組み込んだスライドを投影することや、そのスライドを受講者向けにオンラインストレージなどにアップロードすることがあります。こうした行為は通常、著作権法上の「複製」や「公衆送信」といった著作物の利用を伴うため、著作権や著作者人格権を侵害しないよう注意する必要があります。特にオンライン教育は、フィジカルでの開催以上に多くの受講者が視聴可能な上、アップロードされたデータが別の目的に利用されたり、不特定多数の第三者に拡散されたりするリスクが大きいことから、より慎重な取り扱いが求められます。

 

著作物の利用にあたっては、原則として著作権者から事前の許諾を得る必要があり、許諾がない場合には、著作権法上の例外規定に基づいて利用する必要があります。具体的には、著作権法上「引用」(著作権法32条1項)として認められる範囲及び方法で著作物の利用することが考えられます。なお、学校その他の非営利の教育機関においては、オンライン教育の際に著作権者の事前の許諾なく著作物を一定の範囲で利用できる例外規定がありますが(著作権法35条1項及び2項)、企業におけるオンライン教育には適用されません。

 

著作物の利用が「引用」と認められるには、一般に、「引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること」、「カギ括弧等によって引用部分が明確に区分されていること」、「引用行う必然性があること」等の要素を備える必要があります(たとえば、文化庁による「著作権なるほど質問箱」(https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/naruhodo/outline/8.h.html)ご参照)。

 

なお、引用時に内容を省略することが認められる一方、別途許諾が必要な「翻案」という利用行為に該当し、また著作者人格権としての同一性保持権の侵害にも当たり得ることから、内容を改変することは避ける必要があります。利用の態様が「引用」の範囲内であるかはケースバイケースですが、たとえば「画像」についてはそもそも部分的な利用が難しく(部分的な利用が同一性保持権の侵害に当たるとも考えられます。)、「引用」として認められる範囲は限定的という考え方もあるなど、引用する対象によってはより慎重な取扱いが求められます。

 

また、資料データを不特定多数の第三者に拡散されるリスクを低減するため、第三者の著作物を引用する必要がある場合には、可能な限り授業中の投影限りとし、配布資料には含めないことも考えられます。

 

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