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2021.06.01| オンラインジャーナル

テレワーク時代の秘密情報管理

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4. テレワーク導入と秘密管理

テレワークを導入し、社外への秘密情報の持ち出しや外部からのアクセスを認めることで、情報漏洩のリスクが高まることは否定できません。ただし、秘密情報の持ち出し・外部アクセスを認めたからといって、ただちに秘密情報が法的に保護されなくなるわけではありません。そこで、テレワーク導入に際しては、秘密保持と事業活用のバランスをとって、客観的認識可能性が確保されるように管理体制を見直す必要があります。

 

秘密情報は、情報の性質、選択された媒体、機密性の高低、情報量等に応じて、秘密情報ではない情報と合理的に区分される必要があります。その上で、アクセスを管理した上で、秘密情報を外部に流出させないような情報管理体制を構築する必要があります。また、万が一流出した場合に備えて、秘密情報の使用状況(取得、使用、複製等)を事後的に追跡できるようにしておくことも大切です。

具体的には、テレワークを念頭に置いた社内規程を整備・周知し、秘密情報の社外からのアクセスに関するルールを情報の成立に応じて定める必要があります。そのうえで秘密情報の使用状況(取得、使用、複製等)をモニタリングできる体制を整備しておくことも重要でしょう。

 

たとえば、作業環境としても、できるだけ自宅で行うよう指導し、万一自宅外で作業を行う際も、資料やPC 等を机上に放置しないことに関するルールの徹底、PC へののぞき見防止フィルム等の貼付することの徹底等、情報の流出を防ぐルールの徹底などが考えられます。また、使用状況の把握と漏洩の抑制という観点から、社内データベース、メール、ウェブサイトのアクセスや使用状況を常時又は事後的にモニタリングできる体制をとっている企業も多くあります。

 

一方で、秘密情報の持出しを厳格に禁止する情報取扱規程はそのままにして、臨時の運用として明確なルールを定めることなく、情報の持ち出しや外部アクセスを行き当たりばったりで黙認するような運用は避けるべきです。このような対応では、従業員は、何が秘密情報であり、どのように秘密情報を管理すべきかを明確に意識することができませんので、情報漏洩リスクは高まりますし、法的保護が受けられなくなる可能性も高くなります。緊急事態宣言下で急遽テレワークを導入した直後であればそのような対応もやむを得なかったのかもしれませんが、テレワークが半常態化してきている今となっては、明確なルールを定め、かかるルールの周知と運用を図るべきでしょう。

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