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2021.06.01| オンラインジャーナル

テレワーク時代の秘密情報管理

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2. 秘密情報管理の基本的な考え

秘密情報を管理するとは、企業の秘密情報を外部に流出させずに(秘密保持)、秘密情報を事業に活用する(事業活用)ということを意味します。「秘密保持」を徹底するためには、情報を誰からもアクセスできないように厳重に保管すればよいのですが、これでは誰も情報を使用できませんので「事業活用」が実現できません。一方、誰でもどこでも情報にアクセスができれば利便性が高まり「事業活用」には有益ですが、情報漏洩リスクが高くなり「秘密保持」が難しくなります。秘密保持と事業活用のバランスを意識することは秘密管理の基本となります。適切なバランスは、秘密情報の性質・内容、事業内容によって様々ですので、自分の会社で管理する秘密情報と事業内容にあった秘密管理体制を考える必要があります。

 

また、秘密管理体制を考えるときは、秘密情報が漏洩しないことと同時に、漏洩を想定してこれに備えることを意識することも大切です。秘密保持を徹底しても、秘密情報を事業活用している以上、漏洩リスクをゼロにすることはできません。独立行政法人情報処理推進機構が2021年3月に公表した「企業における営業秘密管理に関する実態調査 2020 調査実施報告書 *1」によれば、中途退職者(役員・正規社員)による漏洩が最も多い(38%)そうです。

厳格な管理体制を敷いていたとしても、秘密情報にアクセスする権限を持つ人を通じた漏洩は完全には防げません。漏洩の可能性を常に意識して、万が一の場合に被害を最小限に留めるための体制を講じておく必要があります。

3. 秘密情報を法的に保護するための管理体制

秘密情報は法的に保護されます。まず、秘密保持契約や就業規則で秘密保持義務が定められていれば当事者間では法的保護が及ぶことになります。さらに、十分な管理体制が講じられている秘密情報であれば、不正競争防止法で秘密情報は「営業秘密」としての保護を受けることもできます。不正競争防止法の営業秘密として情報が保護されるためには、事業活動に有益な非公知情報が「秘密として管理されている」こと(秘密管理性)が要件となります(同法2条6項)。最近の裁判例等によれば、この秘密管理性が認められるためには、情報が秘密として管理されていることが認識可能な程度に客観的に秘密として管理されている必要があると解されています(知財高判平成23年9月27日、知財高判平成30年3月26日等)。つまり、情報に接した者(外部者や従業員)が「これは秘密情報として管理されている」という認識が生じる程度に管理されていれば営業秘密として保護を受けられるということです。

 

なお、余談ながら、かつては裁判所による秘密管理性の判断は非常に厳格であるなどと言われていましたが、最近では、情報の性質や事業内容、規模に応じて秘密管理性について柔軟な判断をしてくれる裁判官も増えているような印象を持っています。

 

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