2021.05.08|
クロスボーダーM&A契約の勘所~COVID-19後の展望を踏まえて~
2. 英文契約なんて、簡単さ!?
皆様は、本稿で取り上げるクロスボーダーM&A契約などの英文契約につき、どのようなイメージをお持ちでしょうか?筆者が普段会話をすることの多い一般企業の皆様の中には、「英文契約はハードルが高い」と感じられる方もいらっしゃるようです。ただ、本稿をお読みになる皆様におきましては、豊富な法務経験をバックグラウンドに、むしろ「英文契約は、簡単に読みこなせる」という方も多いのではないでしょうか。
そのご感覚は正しいのでしょうか?あえて本稿でストレートに答えを出すとすれば、筆者は「その通り、簡単です!」とお答えします。理由は、いくつかありますが、一つには、英文契約は、かなり定型化されてきていることが挙げられるでしょう。クロスボーダーの株式譲渡取引のために締結する英文M&A契約についていえば、厳密には米国型と英国型とで分かれるものの、通常は、定義・解釈の規定→クロージング・対価等に関する規定→前提条件(Conditions Precedent/CP)に関する規定→誓約事項(義務)の規定→表明保証/補償の規定→一般条項等などといった形で、大まかに流れが決まっています。その流れさえ頭に入っていれば、細かい点は気にしないでも、契約全体の構成はすぐに理解できるでしょう。
また、近時は、国内の日本語のみのM&A契約においても、英文M&A契約の構成に準じた構成を採用していることが多いことも、英文M&A契約が理解しやすくなっている要因です。かつての純粋な国内の日本語のM&A契約は、クロージングの手続が厳密に定められていなかったり、表明保証事項もほとんど規定されなかったりと、英文M&A契約に比して、かなり簡略化された様式のものが散見されましたが、現在ではそのような契約は数少ないように感じます。M&A契約実務の変化は、多くの場合欧米の契約実務を通じてM&A契約の中身に反映されていくことが通例で、今回のCOVID-19の蔓延による変化も例外ではありませんが、そのような変化が日本国内の契約実務にも、比較的速やかに反映されていくのが近時の状況でもあります。
以上のように、本稿では、英文契約は、国内の日本語の契約とも大きく変わらず、難しくはない、という点を出発点としつつ、あえて、それでも注意しなければならない①前提条件(CP)に関する規定、②価格調整等に関する規定、③準拠法・管轄に関する規定に特に触れてみたいと思います。
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