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2021.02.02| オンラインジャーナル

第一人者が解説 するタイムスタンプの展望

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5. タイムスタンプに関する最近の議論

タイムスタンプについては、現在、日本データ通信協会による認定制度が運用されていますが、民間の認定制度では永続性に不安がある、制度の認知度が低い、国による信頼性の裏付けがなく国際的な通用性への懸念がある、といった声がありました。こうした点をふまえ、総務省の「プラットフォームサービスに関する研究会」の下に設置されたトラストサービス検討ワーキンググループによる2020年2月の報告書では、タイムスタンプの更なる普及に向けて、国が信頼の置けるサービス・事業者を認定する仕組みを設けることが適当とされました。

 

これを受けて、同年3月から総務省の「タイムスタンプ認定制度に関する検討会」において国による新たな認定制度が検討され、同年12月に取りまとめ(案)が提示されています(タイムスタンプ認定制度に関する検討会(第9回)資料9-1 https://www.soumu.go.jp/main_content/000723632.pdf)。

 

新制度では、国が一定の認定基準を定め、事業者から認定の申請があれば、必要な調査を経て、サービス単位での認定が行われる予定です。認定の有効期間は現行制度と同じ2年間であり、年1回の監査(内部監査も可)が義務付けられる見込みです。

 

検討会では、既存の認定制度をベースとしつつ、特にこの分野で先行しているEUの制度(eIDAS規則)を参考に、国際通用性や利便性を意識した調整が図られました。例えば、外国事業者による認定申請を可能とする、特定の時刻配信事業者から時刻の提供を受ける方式によらず事業者が自ら時刻の信頼性を確保する方式をとることも認める、事業者の財務状況等を認定要件に追加する、サービス廃止時は廃止の届出と併せて終了計画の提出も求めるといった点などが現行制度から変更されています。

 

その他、電子データに付与されたタイムスタンプが認定されたものか否かを自動的・機械的にチェックできるよう、認定サービスのリストを機械が読み取れる形式でも公表することが議論されましたが、この点は今後の検討課題となりました。

 

6. おわりに

国による新たな認定制度は、2021年4月~6月以降に申請受付が開始される予定です。今後、総務省から電子文書の送受信・保存に関わる法令を所管する各省庁に対し、新制度でのタイムスタンプ付与を要件とするよう働きかけるなど、広く利用の促進が行われる予定です。新たな制度のもとで、タイムスタンプに対する利用者の一層の信頼が得られれば、将来的には、公証人の確定日付印のように、権利義務に紐づいた制度になっていくことも期待されるところです。

 

また、近時は定額制のタイムスタンプ付与サービスも提供されていますので、知財関連文書や取引関連書類だけでなく、紛争リスクのある社外との電子データのやりとりや、コンプライアンス上改ざんが許されない社内の電子データに対して、原則全件タイムスタンプを付与して事後的な改ざんを予防するといった運用もしやすくなっています。電子データには改ざんのリスクがつきものであり、タイムスタンプの付与は、法務やコンプライアンスに関わる方々にとって大きな助けになると思いますので、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

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