2021.01.12| オンラインジャーナル
フリーランスの拡大とその課題
4. 法的保護に関する議論の状況と今後の課題
日本における議論の状況ですが、フリーランスの法的保護に関する議論は現在様々な組織等でなされており、例えば厚生労働省の有識者会議である「雇用類似の働き方改革に関する検討会」報告書(2018年3月30日)では、フリーランスを含む雇用によらない働き方をする者に関する調査に基づき、そういった者への保護の必要性等の課題があげられ、それに続く「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」が2019年6月にまとめた中間整理では、雇用類似の働き方をする者の労働政策上の保護の在り方や、独占禁止法など経済法との関係について引き続き検討する必要があることの指摘がなされました。
また、独占禁止法との関係では、公正取引委員会競争政策研究センターが、2018年に「人材と競争政策に関する検討会報告書」をまとめ、その中で、個人の役務提供者と発注者との取引に関する競争政策上の論点を整理し、フリーランス等の個人として働く者については、発注者との関係で優越的地位の濫用や下請法が適用され得る旨の指摘をしています。
さらに、このような流れを踏まえ、本年7月に閣議決定された、「成長戦略実行計画」では、フリーランスの環境整備として、フリーランス保護に独占禁止法、下請法を利用する方向性が示され、そのための実効性のあるガイドラインを策定していくことが明示されました。
このように、現時点の議論をみるに、日本では、労働基準法上の労働者性を拡大することでフリーランス保護を図るべきとする意見や流れは強くなく、フリーランスは原則として独立の事業者であるということを前提として、その保護には独占禁止法、下請法を利用していく方針が示されています。
なお、フリーランスが労働組合法上の労働者に該当するか否かという点についてはまだそれほど議論がなされておらず、この点については、カルテル等を禁ずる独占禁止法と事業者による団体交渉といった活動との限界なども含め、今後の議論や実務の展開を注視する必要があると思われます。
また、独占禁止法や下請法によって保護を図るとしても、その具体的な内容に加えて、公正取引委員会が、全国的な組織体制と経験を有する、労働基準監督署のような指導・監督機能を果たし得るか、独占禁止法や下請法ではセーフティネットの役割は果たせないところ、保護として不十分なのではないかといった様々な論点がまだあるように思われます。
日本においてフリーランスは発展、定着するか>