日本組織内弁護士協会(JILA)は、組織内弁護士およびその経験者によって創立された任意団体です。

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2021.01.12| オンラインジャーナル

フリーランスの拡大とその課題

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2. フリーランス人口の増加とその背景

フリーランスについては様々な議論がなされていますが、現時点ではまだ「フリーランス」という言葉の正式な定義はなされておらず、そのため、日本のフリーランス人口についても、その正確な統計等は存在しません。

 

もっとも、厚生労働省の有識者会議である「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」において公開された、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の報告では、雇われない働き方をしている者(約188万人)と、法人経営者、個人事業主で店主ではない者(約202万人)の合計が約390万人、そのうち発注者から業務作業の依頼を受けて行う仕事をしている者が約288万人との試算が出されています。

 

このように、フリーランス人口については、その正確な数字は明らかではありませんが、試算によってもフリーランス人口は近時急速に拡大をしており、その背景としては、ライフスタイルの多様化に伴い、特定の雇用主に属しない自由な働き方が拡がっていること、発注者と人材をインターネット上でマッチングする、いわゆるクラウドソーシングの拡大などがあげられており、フリーランスを含む多様な働き方は、今後も拡がっていくことが予想されます。

 

3. フリーランスの法的保護の必要性とその方法

前述のとおり、フリーランスについては、原則として労働基準法上の労働者ではなく、労働関連法令等の保護対象とならないという課題があります。具体的には、フリーランスは個人という企業に比して弱い立場でありながら、労働時間規制等の労働基準法の保護はもちろん、雇用保険、労災保険、最低賃金といったセーフティネットの対象とならず、ともすれば、安価で契約解除が容易な外部労働力として利用されてしまう可能性も否定できません。

 

そこで、このようなフリーランスの法的保護をいかに図るべきかという議論が近時活発になされています。

 

フリーランスの法的保護については、1) 労働者性の概念を拡大し、フリーランスにも労働基準法の保護を及ぼす、2) フリーランスをあくまでも独立の事業主として扱いつつ、独占禁止法や下請法によって保護を図る、3) 労働者性を拡大するのではなく、自営業者のうち保護を必要とする者や分野について、別途必要な措置を講じるといった方策が考えられます。

 

この点、例えば米国カリフォルニア州では、通称「ギグ・エコノミー規制法」が本年より施行され、個人請負労働者の認定を厳格化することで労働者性の概念を広げ*1、その保護を図っています。

 

*1同法では、「ABCテスト」と呼ばれる、自営業者の条件を定め、概要、A) 業務遂行に関し契約上及び実態上使用者の指揮監督を受けないこと、B) 使用者の通常の事業の範囲外の業務を行っていること、及び、C) 受託者が独立かつ確立した同種の業務に従事していることの全ての条件を満たさない限り、自営業者ではなく労働者に該当するとされています。

 

 

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