New2025.08.12| オンラインジャーナル
これからの組織内弁護士は「設計者」になる 〜法務オートメーションが実現する、属人化からの脱却と戦略的価値の創造〜
筆者
山本 俊(やまもと しゅん)
弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、GVA法律事務所を創業。
2017年にGVA TECH株式会社を創業して代表取締役に就任し、2024年に東証グロース市場へ上場。「法とすべての活動の垣根をなくす」を掲げ、LegalTech SaaS「OLGA」と法務手続クラウド「GVA 法人登記」 「GVA 商標登録」を展開する。
− 目次 −
1. 法務オートメーションが拓く、戦略法務への道
2. アナログ法務の管理手法と構造的課題
3. なぜ今「法務オートメーション」が不可欠なのか
4. 法務オートメーションがもたらす定量的・定性的効果
5. 「効率化」の先にある、法務部門の戦略的価値向上
6. 法務基盤の「設計者」として未来を創造する
1. 法務オートメーションが拓く、戦略法務への道
本稿では、多くの組織内弁護士が直面する業務の属人化や情報散逸といった課題を「法務オートメーション」によっていかに解決し、法務部門の価値を戦略的レベルにまで高めることができるのか、その具体的な効果と未来像を解説します。
事業の複雑化やグローバル化に伴い、法務部門が直面する課題はますます多様化しています。日々発生する多種多様な法務案件に対し、迅速かつ的確な判断を下すことが求められる中で、従来の業務プロセスに限界を感じている方も少なくないでしょう。
法務オートメーションとは、これまで属人的な手作業に頼りがちだった法務業務のプロセスを自動化し、新しい法務のあり方を実現する取り組みです。具体的には、法務案件の受付から処理、終結、そしてナレッジとしての蓄積・活用に至るまでの一連の流れを、ツールやルールを用いて最適化します。
これにより、メールやチャット、口頭などバラバラな依頼方法によって生じる情報の散逸や管理の煩雑さを解消し、担当者の経験知に依存しない、再現可能な業務体制の構築を目指します。
これは単なるツール導入に留まりません。かつてソニー創業者の盛田昭夫氏は、「ビジネスのリスクを的確に分析し、説明し、トップに決断を求めるこの機能こそが企業法務の基本だと思う」(ジュリスト857号, 1986年)と述べました。この言葉に集約されるように、法務部門が経営に貢献するためには、定型業務を仕組みに任せ、インハウスローヤーが「人間にしかできない高度な判断」に集中できる体制を築くことが不可欠です。法務オートメーションは、まさにそのための基盤作りなのです。