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2021.06.03| オンラインジャーナル

イノベーション時代のM&Aと新たな競争法審査 ~企業結合ガイドライン改正を踏まえて~

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6. おわりに

デジタル・プラットフォーマーやベンチャー、スタートアップが躍動する現在のM&A市場には、次世代を担うイノベーションの創出が期待される一方で、M&Aが研究開発競争を阻害するなど、かえって市場での競争や社会への影響が懸念される可能性もあります。M&A市場、ひいてはM&Aの競争法審査は変革の過渡期にあり、M&Aによるイノベーションの実現と推進において法律実務家が担う役割、特に日進月歩の先端的な議論や事例に精通した外部の法律専門家の役割は重要性を増しているといえるでしょう。

 

企業結合ガイドラインと対応方針の改正も、事前審査の要否や企業の競争力の評価において、新たなアプローチの必要性を示唆しているといえます。M&Aの競争法審査対応(競争当局への届出の要否や審査の見通しをどう考えるか)においては、M&Aを行う各当事会社グループの国内売上高や資産額などの財務データや市場シェアの分析だけでなく、当事会社グループの各国における事業のプレゼンス(事業上の重要性)やM&Aで想定されるシナジーは何か、競争の実質的制限を生じ得る事情(セオリーオブハーム)は想定されるかといった、M&Aの実質にもう一歩踏み込んだ検討をすることが重要になってきています。特に、M&Aによって当事会社の競争力を向上させる「シナジー」は、当該M&Aによって影響を受ける(制限され得る)競争の裏返しといえ、競争当局も審査において注目する重要なポイントです。

 

このため、これまで以上に、組織の内外を問わず、法律実務家がM&Aの本質的な目的やシナジー、そこからもたらされるイノベーションの意義、市場や社会にもたらされる価値などをより深く理解し、ビジネス・事業サイドと強固に連携し協働することが、よりよいM&Aの実現に今後より一層求められるであろうと思われます。

 

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