2021.06.01| オンラインジャーナル
テレワーク時代の秘密情報管理
5. 具体的な管理方法に関する参考情報
導入すべき秘密管理措置の内容・程度は、事業内容・規模、情報の量・性質、執務室・ITシステムの状況など企業の事情によって千差万別であり、何が最も適切な管理体制なのかという問いには正解がありません。秘密管理措置の手法や考え方についての知識とノウハウを蓄えて、自社にあった管理体制を構築するしかありません。秘密管理措置の手法については、参考となる情報が様々公表されていますので、ここで、いくつか紹介します。
まず、秘密情報の技術的管理の観点からは、セキュリティの観点から安全性の高いシステムを導入し、情報に対するアクセス・複製を制限し、使用状況をモニターする技術的な措置を講じておく必要があります。総務省の「テレワークセキュリティガイドライン*2」では、VPN を利用し迅速なパッチ適用等の適切な運用を行う、リモートデスクトップを利用するなどの対応が推奨されています。
また、経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック*3」には、一般的な秘密管理体制の手法が提示されていますし、「テレワーク時における秘密情報管理のポイント(Q&A解説)*4」 では、テレワーク業務態様に応じた秘密管理体制のアイデアを提示していますので、テレワーク導入時の秘密管理体制を検討する際には参考となります。
先に引用した「企業における営業秘密管理に関する実態調査 2020 調査実施報告書*5」では業種や規模に応じた管理体制についての調査結果が掲載されています。他社と比較すればよいわけではありませんが、同業種や同規模の会社の管理体制がどのようなものであるかは自社の管理体制のあり方を考える上では参考にはなると思います。
*3 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf
*4 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/teleworkqa_20200507.pdf
*5 https://www.ipa.go.jp/files/000089191.pdf
6. おわりに
テレワーク導入時の秘密管理といっても普段の秘密管理の延長線上にあります。秘密保持と事業活用のバランスのもとで、十分なセキュリティ対策を講じた上で、情報の性質・内容に応じた明確な運用を行うことが情報漏洩を防ぎ、情報漏洩時の被害を防止し、情報の法的保護可能性を高めることになります。本稿で記載した考え方や参考情報が、テレワーク導入後の秘密情報管理を改めて見直す際の一助となれば幸いです。
営業秘密に関する実務的論点についてより詳しく知りたい方は「Q&A営業秘密をめぐる実務論点」もご参照ください。
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