2021.02.02| オンラインジャーナル
第一人者が解説 するタイムスタンプの展望
2. タイムスタンプで証明できるもの
タイムスタンプには、後述するとおり、電子データのハッシュ値(その電子データから算出される、ほぼ固有の値)が用いられます。このハッシュ値は、電子データの指紋のようなものであり、電子データの内容が変更されると、全く違う値になります。そのため、ある電子データにタイムスタンプを付与しておけば、その電子データがタイムスタンプ付与時点で存在していたこと、さらに、その後の修正・変更がないことを証明することができます。
近時、印鑑に代わるものとして電子署名の普及が進んでいますが、契約書等の電子データに電子署名が施される際には、通常、タイムスタンプもあわせて付与されます。電子署名は、誰がどの文書に署名をしたかを証明するものですが、同時にタイムスタンプを付与することで、電子署名が付された時刻及びその後の非改ざんの証明もできるようになります。
なお、過去のある時点に文書が存在したことを証明する手段として、法務担当者や弁護士にとって馴染みがあるのは、公証人の確定日付印(民法施行法5条1項2号)ではないでしょうか。公証人も、電子的な確定日付印の付与と対象データの保存を行うサービスを提供しており、それによりある時点での電子データの存在及び非改ざん性を証明できます。しかし、申請のための手続(法務省の登記・供託オンライン申請システムを通じて行う必要)及びコスト(1件700円、データの保存を依頼する場合はプラス300円)の面で、それほど手軽に使えるものではありません。
これに対して、民間事業者が提供するタイムスタンプは、手続も簡易でコストも非常に安いため、日常的に使用することができます。もっとも、公証人の確定日付印には、債権譲渡の第三者対抗要件に関するもの等、法律上特別な効果があり、その点は現行のタイムスタンプでは代替できないため、注意が必要です。
3. タイムスタンプの仕組み
ユーザーがある電子データにタイムスタンプを付すためには、次のステップをたどります(なお、タイムスタンプにはいくつかの技術的方式がありますが、ここでは最もメジャーなデジタル署名方式を紹介しています。)。
- 電子データのハッシュ値(その電子データから算出される、ほぼ固有の値)を生成し、それをタイムスタンプ付与するサービスベンダー(時刻認証局)に送付します。元の電子データそのものは送付されないため、サービスベンダーに内容が伝わることはありません。
- 事業者は、当該ハッシュ値に時刻情報を結合し、それに電子署名を施したもの(タイムスタンプトークン)を作成し、ユーザーに返送します。
- ユーザーは、電子データのハッシュ値と、タイムスタンプトークンに含まれるハッシュ値を比較することで、改ざんの有無を検証できます(改ざんがあれば、タイムスタンプトークンに含まれるハッシュ値と齟齬が生じることになります。)
実際には、サービスベンダーやアプリケーション提供者がわかりやすいインターフェイスを用意してくれていますので、ユーザーは技術的な処理を意識することなく、タイムスタンプの付与や検証を行うことができます。
総務省「電子署名・認証・タイムスタンプ その役割と活用」より
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/ninshou-law/pdf/090611_1.pdf
企業におけるタイムスタンプの活用方法>