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New2020.07.21| オンラインジャーナル

企業における発信者情報開示請求の実務について

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2. 被害者からの発信者情報開示請求

被害者からの任意の開示請求に応じるか否ですが、ほとんどの企業におかれましては、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が公表しているプロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドラインに記載の発信者情報開示請求の手続や判断基準等に沿った社内プロセスを策定されているものと思います。

 

具体的には、発信者情報の開示請求への対応に当たり、まずは発信者の意見を聴取することになります。そして、発信者から開示に同意する旨の回答を得た場合は、発信者情報を開示します。

 

一方において、発信者から開示に同意しない旨の回答を得た場合または一定期間(2週間)経過しても回答がない場合には、権利侵害の明白性および発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無について判断します。その上で、請求が開示の要件を満たすと判断した場合には、発信者情報を開示します。被害者保護の観点から、このプロセスを積極的に採用する企業が今後増えていくかもしれません。

 

しかしながら、このような要件該当性の判断を容易にできる事案であればともかく、自らその判断をすることは困難なケースが多いでしょうから、発信者から開示に同意しない旨の回答を得た場合または一定期間(2週間)経過しても回答がない場合には、発信者からの損害賠償請求のリスクを考慮すると、一律に開示しない運用もあり得ます。

 

さらには、プロバイダ責任制限法4条1項は、発信者への意見聴取を発信者に対する一般的な注意義務として規定しているものの、 同項が発信者情報開示の要件となっているわけではありません。そこで、実際の運用において発信者から開示に同意する旨の回答を得るケースはまずあり得ないと判断するのであれば、そもそも発信者の意見聴取すら行わないことも十分に考えられる選択肢です。

 

このような事情により開示請求に応じない場合には、被害者から発信者情報の開示請求を受けた際、社内ポリシーに照らし開示できないため、裁判所へ申し立てるよう伝えることを検討することになります。

 

なお、仮処分で投稿者の情報(IPアドレス,タイムスタンプ等)が開示されるまでの期間は、申立てから1〜2か月が目安です。また、当該IPアドレス等の開示を受けて本訴提起を行い、発信者情報の開示を受けるのに3~4ヶ月はかかります。したがって、加害者特定までにかかる期間として少なくとも半年程度はかかることになります。

 

他方、発信者の通信履歴ログが保管されている期間は、書き込みやログインから数か月が目安と一般的にいわれています。そして、通信履歴ログが消えた後では、開示請求による発信者の特定はできなくなります。

 

開示請求を受ける企業の法務担当としては、開示の対象となる発信者情報は企業が保有するものに限られていることから(プロバイダ責任制限法4条1項)、会社が決めている保存期間を把握しておく必要があります。そして、そもそも請求を受けた情報が所定の期間経過により削除されているのであれば、その旨を回答することで足りることになります。

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