日本組織内弁護士協会(JILA)は、組織内弁護士およびその経験者によって創立された任意団体です。

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New2025.08.12| オンラインジャーナル

これからの組織内弁護士は「設計者」になる 〜法務オートメーションが実現する、属人化からの脱却と戦略的価値の創造〜

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2. アナログ法務の管理手法と構造的課題

法務オートメーションの必要性を理解するために、まずは多くの企業で採用されている従来型の管理手法、すなわち「アナログ法務」の実態と、そこに潜む課題を見ていきましょう。

 

多くの企業では、法務案件の管理に以下の様なツールが使われています。これらは導入が容易である一方、オートメーション化されていないがゆえの共通の課題を抱えています。

  • メール(Outlook、Gmail等)
    最も手軽な方法ですが、依頼内容の不足や手作業での台帳転記ミスが起こりがちです。過去案件の検索にも多大な時間を要し、情報は個人の受信トレイに埋もれてしまいます。
  • チャット(Teams、Slack等)
    迅速なコミュニケーションが可能ですが、重要な依頼や情報がタイムラインで流れてしまいがちです。また、秘匿性の高い相談がダイレクトメッセージで行われると、情報が完全に属人化するリスクがあります。
  • プロジェクト管理ツール(Jira、Notion等)
    案件情報の集約やステータス管理には有効ですが、依頼者である事業部門にもツールの習熟を求めることになり、全社的な導入・定着には相応のコストと労力がかかります。
  • ワークフローツール
    申請フォームにより依頼情報を標準化できますが、その後の双方向のコミュニケーションには不向きなことが多く、結局やり取りはメールで行われるなど、情報が分散する一因となります。
  • 社内システム(内製システム、SharePoint等)
    自社の業務プロセスに最適化できる可能性がある一方、軽微な改修にも専門知識や他部署の協力が必要で、柔軟性や検索性に乏しいケースが散見されます。

 
これらの手法に共通するのは、情報の一元管理、プロセスの自動化、そしてナレッジの蓄積・活用という点での構造的な課題です。
 

3. なぜ今「法務オートメーション」が不可欠なのか

現代のビジネス環境において、法務部門が扱う課題の根源は、主に3つの「多様性」が複合的に絡み合うことにあります。

  • 法務案件の多様性:
    契約審査、法律相談、訴訟対応、M&Aなど、案件の種類は多岐にわたります。
  • 依頼部門の多様性
    営業、開発、人事など、社内のあらゆる部門から相談が寄せられます。
  • 依頼ツールの多様性:
    メール、チャット、各種ワークフローなど、依頼の窓口が分散しがちです。

 
これらの「多様性」が絡み合い、情報が散逸することで、対応状況の把握が困難になり、過去の類似案件を参照するのも非効率になります。結果として、インハウスローヤーの業務負荷は増大し、迅速かつ適切な法的判断への遅延に繋がるリスクを招きます。

 
コンプライアンス遵守の社会的要請が一層強まり、ビジネススピードの加速が求められる現代だからこそ、この煩雑さを解消し、効率的で質の高い法務機能を実現するための「法務オートメーション」が急務となっているのです。

 

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